自社ブランドでサプリメントを出したい、あるいは仕入れて店やネットで売りたい。
そう考えて製造元を探し始めたとき、多くの人が最初につまずくのが「そもそも自分たちに許可が要るのか」という点です。
はじめまして、篠原亮介と申します。
地方の食品卸で14年、営業をやりながら与信管理も兼務していました。
今はフリーで、中小企業の取引先調査や与信の相談を受けています。
健康食品の分野は、許可の要否だけを見ると意外と入口が広い一方で、表示と広告のところで一気に難易度が上がります。
しかも制度そのものが今まさに動いていて、2026年9月1日には機能性表示食品のサプリメントに関わる大きな変更が実施されます。
この記事では、メーカーと契約する前に確認しておきたい許認可と表示のルールを、行政の一次情報をもとに整理します。
最後に、相手の会社そのものをどう確かめるかについても書きます。
サプリを扱うのに、自社に許可は要るのか
結論から書くと、包装済みの製品を仕入れて売るだけであれば、多くの場合は営業許可も届出も必要ありません。
ただし「多くの場合」であって、全部ではありません。
2021年6月1日に施行された改正食品衛生法で、営業に関する仕組みが3層に整理されました。
- 許可が必要な32業種
- 許可は要らないが保健所への届出が必要な業種
- 届出も不要な業種
厚生労働省が公表している資料では、常温で長期間保存できる包装食品の販売業は、届出も不要な区分として例示されています。
一方で、要冷蔵や要冷凍の製品を扱う販売業は届出の対象です。
錠剤やカプセルのサプリメントは常温流通が基本なので、仕入販売だけなら届出不要に当たることが多くなります。
とはいえ、この判断には管轄の保健所の見解が入ります。
扱う製品が決まった段階で、一度電話で確認しておくほうが確実です。
製造委託先が「どの区分で」営業しているかを聞く
自社で作らず製造を委託する場合でも、委託先がどの区分で営業しているかは把握しておくべきです。
東京都が公表している業種一覧では、いわゆる健康食品の製造業は届出の対象に分類されています。
つまり、健康食品の製造そのものには許可制度がありません。
ここだけ見ると「届出さえ出していれば作れる」ように読めます。
ただし製品の形態によっては、許可業種のほうに引っかかります。
ドリンクタイプなら清涼飲料水製造業、常温保存できる密封包装の食品なら密封包装食品製造業が該当し得ます。
どちらも食品衛生法施行令が定める32業種に含まれる許可業種です。
ですから、聞き方としては「許可は取っていますか」ではなく、次のようにするのが実務的です。
- 営業許可証または営業届出済証のコピーをもらう
- そこに書かれた業種区分が、これから作る製品の形態と合っているかを見る
- 許可証なら有効期限も確認する
あわせて、食品衛生責任者を置いているかも確認しておきたいところです。
厚生労働省は、許可の要否にかかわらず原則としてすべての営業者に食品衛生責任者を定めることを求めています。
HACCPに沿った衛生管理も2021年6月から原則すべての食品等事業者が対象になっているので、衛生管理計画と記録の有無を聞けば、相手の管理レベルはだいたい見えます。
2026年9月1日から、機能性表示食品のサプリはGMPが前提になる
ここが今いちばん確認しておくべき点です。
紅麹関連製品の健康被害を受けて、2024年8月23日に食品表示基準が改正されました。
その中に「天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の届出に関する製造加工等におけるGMP基準の適用」という項目があり、消費者庁が公表している機能性表示食品の今後についての資料では、この実施日が令和8年9月1日と明記されています。
令和8年9月1日は、2026年9月1日です。
健康被害情報の収集体制は2024年9月1日から、届出情報の表示方法の見直しは2025年4月1日から先行して施行されていて、GMPだけが最後に残っていました。
GMPは Good Manufacturing Practice の略で、原料の受け入れから出荷までの工程を管理するための決まりごとです。
一般の健康食品では第三者認証の取得は任意ですが、機能性表示食品として届け出るサプリメントについては、届出者が守るべき事項として位置づけられます。
「GMPを取っています」と言われたら、どこが取っているのかを聞く
見落とされがちなのですが、健康食品のGMP認証は工場(製造所)単位で出ます。
企業単位ではありません。
認証機関は、公益財団法人日本健康・栄養食品協会と、一般社団法人日本健康食品規格協会の2つです。
どちらの認証も、認証書に対象となる製造所が書かれています。
ですから、営業担当者から「うちはGMP認証工場です」と説明を受けたら、次の3点を確認してください。
- 認証書に書かれている製造所と、自社製品を作る工場が同じかどうか
- 認証の有効期限が切れていないか
- 機能性表示食品として届け出る予定があるなら、2026年9月1日以降の体制がどうなっているか
グループ内に複数の工場があり、認証を取っているのは別の工場だった、という話は珍しくありません。
書面で確かめる価値があります。
表示の責任は、作った会社ではなく売る会社に来ることが多い
許可の話よりも、取引の実務で効いてくるのはこちらです。
食品表示のルールを定めた食品表示基準では、加工食品に表示すべき事項として、名称や原材料名、賞味期限などと並んで「食品関連事業者の氏名又は名称及び住所」が挙げられています。
そしてこの欄について、e-Gov法令検索で読める食品表示基準の第3条には、食品関連事業者のうち「表示内容に責任を有する者」の氏名または名称と住所を表示する、と書かれています。
OEMで作らせた製品のパッケージに、自社名を「販売者」として載せるとします。
その時点で、表示内容に責任を持つのは自社になります。
製造所の所在地と製造者名は別枠で表示されますが、表示の中身を確認する責任まで製造元に移るわけではありません。
「表示案はメーカーが作ってくれるので大丈夫です」という説明を受けることがありますが、作ってもらうことと、責任を負うことは別の話です。
最終の表示案は自社で読み、根拠が確認できない記載は削る。
この作業を契約のどの段階で誰がやるのか、決めておいたほうがいいです。
機能性を書けるのは3種類の食品だけ
もうひとつ、書ける言葉の線引きも押さえておきましょう。
消費者庁の保健機能食品についてのページによれば、機能性を表示できる食品は次の3種類に整理されています。
| 分類 | 手続き | 特徴 |
|---|---|---|
| 特定保健用食品(トクホ) | 国による個別許可 | 製品ごとに審査を受ける |
| 栄養機能食品 | 許可も届出も不要 | 国が定めた定型文で栄養成分の機能を表示する |
| 機能性表示食品 | 販売前に消費者庁長官へ届出 | 安全性と機能性の科学的根拠を事業者の責任で示す |
この3種類に当てはまらない、いわゆる健康食品には、制度として機能性を表示する枠がありません。
「メーカーが機能性表示食品だと言っている」という場合は、消費者庁の機能性表示食品の届出情報検索で届出番号を自分で照合できます。
届出者名と機能性関与成分まで見られるので、契約前に一度検索しておくと安心です。
販売する側も規制の対象になる
広告や販促物についても、メーカー任せにはできません。
医薬品医療機器等法の第66条と第68条は、承認を受けていないものについての誇大な広告や効能効果の広告を「何人も」してはならないと定めています。
健康増進法の第65条も同じく「何人も」で始まり、健康の保持増進の効果について著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させる表示を禁じています。
主語が「何人も」なので、製造元だけでなく、販売店も代理店も対象です。
メーカーからもらった販促文をそのままサイトに貼れば、その表示をした責任は貼った側にも及びます。
景品表示法の側も軽くありません。
実際のものより著しく優良だと示す表示は優良誤認に当たり、課徴金の対象になります。
条文では、課徴金対象期間の売上額に3%を乗じた額とされていて、その額が150万円未満のときは納付を命じられないことになっています。
逆にいえば、売上が伸びるほど金額はそのまま比例して大きくなります。
さらに、表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求められて出せなかった場合、その表示は優良誤認に該当するものとみなされます。
根拠資料をメーカーから受け取っていない状態は、それだけで危うい状態だと考えたほうがいいです。
相手の会社そのものをどう確かめるか
制度の確認と同じくらい大事なのが、目の前の会社が実在して、まともに動いているかどうかの確認です。
ここは私の本来の仕事なので、無料でできる範囲を具体的に書きます。
- 国税庁の法人番号公表サイトで、商号・本店所在地・法人番号を確認する
- 国税庁のインボイス制度の公表サイトで、登録番号が有効かを確認する
- 経済産業省のgBizINFOで、従業員数や届出・認定の情報を見る
- 詳しく見たいときは登記情報提供サービスで登記情報を取る(有料)
ここまでやると、名刺やサイトに書かれている情報との食い違いが見つかることがあります。
注意したいのは、社名で検索して出てくるのが公式サイトばかりとは限らない点です。
運営者が分からないまとめサイトが上位に並び、肝心の実態が読み取れないケースは頻繁にあります。
たとえば株式会社HBSとハイエンドが一緒に検索されている企業情報ページを見ると、神奈川県横浜市に本店を置く株式会社HBSについて、法人番号や本店住所に加えて、2023年11月に登記を閉鎖したことや、住所の変更が1回あったことまで確認できます。
こうした登記の履歴は、会社の現在地を知るうえで手がかりになります。
同時に、この例は社名だけで会社を特定する危うさも示しています。
「株式会社HBS」という商号の法人は全国に複数あり、法人番号が違えば別の会社です。
本店所在地が違えば、当然、事業内容も経営状態も別物になります。
取引先を調べるときは、必ず法人番号で特定してください。
社名だけで検索した情報をもとに判断すると、まったく関係のない会社の評判を見て安心したり、逆に不安になったりすることになります。
契約書で詰めておきたいこと
最後に、契約段階で確認しておく項目を整理しておきます。
私が相談を受けたときに、必ず目を通す部分です。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 製品仕様の確定方法 | 承認した試作品と量産品の同一性をどう担保するか |
| 品質保証と受入検査 | 色や成分含量のばらつきについて、合否の数値基準があるか |
| 表示案の承認手順 | 誰が原案を作り、誰が最終承認するか |
| 回収時の費用負担 | 原料由来の問題だった場合の負担割合をどう決めるか |
| 健康被害情報の連絡 | 消費者からの申し出をどちらが受け、いつまでに共有するか |
| 再委託の可否 | 別の工場で作られる可能性があるか |
| 最低発注数量 | 途中で仕様変更した場合の在庫の扱い |
特に注意したいのが、回収時の費用負担です。
自社が製造していない原料の問題であっても、自社ブランドで売っている以上、回収の当事者になるのは自社です。
2024年の紅麹関連の一件では、原料の供給を受けていた多くの企業が製品の自主回収に踏み切りました。
自分たちが作っていない部分で回収が起きるという事態は、実際に起きています。
なお、PL保険の加入証明を求めるのはよくある実務ですが、これは法令上の義務ではなく商慣行です。
求めても断られることはありますし、断られたこと自体が違法というわけではありません。
まとめ
サプリメーカーとの取引で確認しておきたいことを、あらためて整理します。
- 仕入れて売るだけなら許可も届出も不要なことが多いが、扱う製品の保存温度で変わるので保健所に確認する
- 製造委託先には、営業許可証や届出済証を出してもらい、業種区分が製品の形態と合っているかを見る
- 機能性表示食品のサプリメントについては、2026年9月1日からGMP基準の適用が実施される
- GMP認証は工場単位なので、自社製品を作る工場が対象かどうかを認証書で確かめる
- 表示内容に責任を持つのは、製造元ではなく販売者として名前を載せた側になる
- 薬機法も健康増進法も「何人も」が主語なので、販促物を転載した販売側も規制の対象になる
- 会社そのものは、法人番号で特定したうえで公的なデータベースを使って確認する
制度は今も動いています。
サプリメントを法令上どう定義するかについては2026年6月に中間とりまとめが出た段階で、今後さらに変わる可能性があります。
一度調べたら終わりではなく、契約更新のタイミングで確認し直す前提で付き合っていくのが、結局いちばん安全だと思っています。
